会社設立の必要書類と定款の作り方|発起人・記載事項・電子定款・認証の流れ

会社設立の準備で最初に手が止まるのが、「定款に何を書けばいいのか」「どの書類をそろえるのか」という2つの疑問です。提出する書類は思った以上に多く、なかでも定款は会社の土台になるため、記載に漏れがあると公証役場で差し戻されます。

書類づくりの主役になるのは、設立を企画する発起人です。発起人が定款を作り、資本金を出し、設立時の取締役を選ぶ——この順番を押さえるだけで、必要書類の全体像はぐっと見えやすくなります。

この記事では、発起人の役割から、定款の記載事項3種類、電子定款で印紙4万円を省く方法、登記に必要な書類一覧までを、設立準備のために整理します。設立全体のステップを先に知りたい方は株式会社の設立手順(全体の流れ)を読むと、各書類の位置づけがつかめます。

この記事でわかること

  • 必要書類は「定款・登記・払込」の3グループに分けると迷わない
  • 発起人とは会社をつくると決め、設立を動かす人で、成立後は株主になる
  • 定款の記載事項は絶対的・相対的・任意的の3種類。絶対的記載事項5つが欠けると定款は無効
  • 電子定款にすると収入印紙4万円が不要になる仕組みと、その作り方
  • 株式会社は公証役場での認証が必要、合同会社は認証が不要という分岐

公的情報源: 会社法27条・日本公証人連合会・法務局・国税庁の公開情報(2026年6月閲覧)

結論を先に書きます

会社設立の必要書類は、①定款(会社のルール)②登記申請の書類 ③資本金の払込を示す書類の3グループに分けると整理できます。この3つを作る中心が発起人で、発起人の氏名・住所は定款に必ず書く決まりです。

定款には必ず書く絶対的記載事項が5つあり、ひとつでも欠けると定款は無効になります。そして電子定款にすれば、紙の定款でかかる収入印紙4万円が不要になります。株式会社は定款の認証が要りますが、合同会社は認証が不要、という違いも先に押さえてください。

この記事の要点
  • 必要書類は定款・登記・払込の3グループで考える
  • 発起人は設立を企画し出資する人。氏名・住所は定款の絶対的記載事項
  • 定款の絶対的記載事項は目的・商号・本店所在地・出資される財産の価額・発起人の5つ
  • 電子定款で収入印紙4万円が不要。紙の定款だけ印紙が必要
  • 株式会社は認証が必要、合同会社は認証が不要

目次

会社設立の必要書類は「定款・登記・払込」の3つに分けて考える

必要書類を一覧でいきなり眺めると、種類が多くて混乱します。まずは作る目的ごとに3グループへ分けると、それぞれの書類が「何のためのものか」が腑に落ちます。

3つのグループは、定款グループ・登記グループ・払込グループです。作る順番も基本はこの流れになります。

必要書類の3グループ早見表

グループ代表的な書類役割
定款グループ定款・認証済み定款の謄本会社のルールを定め、株式会社は公証役場で認証を受ける
登記グループ設立登記申請書・就任承諾書・印鑑証明書・印鑑届書など法務局へ会社の存在を登記する
払込グループ資本金の払込を証明する書面(通帳コピー等)資本金が実際に振り込まれたことを示す

この3グループの中心にいるのが発起人です。発起人が定款を作り、資本金を払い込み、登記の準備を進めます。各書類の流れを設立ステップ全体の中で見たい場合は、株式会社の設立手順(全体の流れ)とあわせて確認してください。

なお、株式会社か合同会社かで書類は変わります。合同会社は定款の認証が不要で、用意する書類も少なくなります。会社形態を迷っている段階なら、合同会社の設立手順も読んで比べると判断しやすくなります。

発起人とは|会社をつくると決め、設立を動かす人

発起人とは、会社をつくると決めて設立手続きを企画・実行する人のことです。かみくだけば「会社をつくろう」と言い出し、中心になって動く人を指します。

発起人は1名以上で、必ず1株以上を引き受けて出資します。つまり発起人は、設立と同時に出資者=株主になる人でもあります。一人で起業する場合は、発起人も取締役も自分ひとり、というケースが一般的です。

発起人がやる3つの役割

発起人の仕事は、設立の根幹にあたる重要なものばかりです。役割は大きく3つに整理できます。

  1. 定款を作成し、株式会社なら公証役場で認証を受ける
  2. 資本金を出資し、自分の口座へ払い込む
  3. 設立時取締役など、会社の最初の役員を選任する

この3つを通じて、発起人は会社の骨格を決めます。発起人の氏名・住所は定款に必ず記載し、実印で押印するため、発起人全員の印鑑証明書が必要になる点も覚えておいてください。

発起人と取締役・株主の違い

発起人・取締役・株主は混同しやすいので、立場の違いを整理します。ポイントは「いつの・どんな役割か」です。

立場役割いつの立場か
発起人設立を企画し、出資・定款作成・役員選任を行う設立の準備段階
株主出資して会社のオーナーになる会社の成立後(発起人がそのまま株主に)
取締役株主から委任され会社を経営する成立後。登記簿に名前が載る

発起人は会社が成立すると株主になります。一方、経営をするのは取締役で、発起人は必ずしも取締役になる必要はありません。発起人が自分自身を設立時取締役に選任すれば、成立後は「株主」と「取締役」を兼ねることになり、これが一人会社の典型です。

つまり発起人は「設立を動かす一時的な役割」、株主は「会社のオーナー」、取締役は「経営者」という整理になります。

定款とは|会社のルールブック(株式会社は認証が必要)

定款とは、会社の目的・商号・組織などの基本ルールを定めた書類です。会社の憲法とも呼ばれ、設立時に必ず作成します。

定款で重要なのが、作ったあとの認証です。株式会社の定款は、公証役場で公証人の認証を受けないと効力が生じません。これは設立の途中で必ず通る関門です。

一方で、合同会社の定款にはこの認証が不要です。ここが株式会社と合同会社の大きな違いで、認証手数料の有無が費用差にもつながります。

定款の認証が必要かどうか

会社形態公証人の認証認証手数料の目安
株式会社必要3万〜5万円(資本金により変動)
合同会社不要0円

認証手数料は資本金の額で変わり、資本金100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、それ以上で5万円が目安です。合同会社はこの手数料がかからないため、設立コストを抑えやすくなります。費用の全体像は会社設立費用の総まとめで整理しています。

定款の記載事項は3種類(絶対的・相対的・任意的)

定款に書く内容は、性質によって3種類に分かれます。この分類を知っておくと、「何を必ず書き、何は省けるか」が判断できます。

  1. 絶対的記載事項:必ず書く。欠けると定款が無効になる
  2. 相対的記載事項:書かなくてもよいが、書かないとその定めの効力が生じない
  3. 任意的記載事項:会社が任意で書ける。書かなくても定款は有効

絶対的記載事項は5つ(欠けると無効)

絶対的記載事項は、会社法27条で定められた必ず書く5項目です。ひとつでも漏れると定款全体が無効になるため、最優先で確認します。

株式会社の定款 絶対的記載事項5つ

#絶対的記載事項内容
1目的会社が行う事業の内容
2商号会社名。株式会社なら「株式会社」の文字を入れる
3本店の所在地最小行政区画(市区町村)まで記載すればよい
4設立に際して出資される財産の価額または最低額設立時に集める出資額
5発起人の氏名または名称および住所発起人全員の氏名・住所

ここで注意したいのが、4番の表現です。よく「資本金額」と説明されますが、絶対的記載事項は「出資される財産の価額または最低額」であって、資本金そのものではありません。資本金の額は、出資額をもとに後で確定する仕組みです。この違いを正確に押さえておくと、定款づくりで迷いにくくなります。

現場で設立を補助した経験でも、絶対的記載事項の書き漏れは、認証で差し戻される代表的な理由でした。とくに事業目的の書き方や、本店所在地をどこまで書くかでつまずきやすい部分です。

相対的記載事項・任意的記載事項

残る2種類は、必須ではないものの実務でよく使われます。違いは「効力との関係」です。

  • 相対的記載事項:書かなくても定款は有効ですが、書かないとその定めの効力が生じない事項です。株式の譲渡制限、取締役会・監査役の設置、単元株式数などが該当します。たとえば株式の譲渡制限は、定款に書いてはじめて効力を持ちます。
  • 任意的記載事項:会社が任意で書ける事項で、書かなくても定款は有効です。事業年度(決算月)、役員の人数、公告方法、定時株主総会の招集時期などが該当します。会社の運営ルールを明確にするために書いておくケースが多いです。

迷ったら、絶対的記載事項5つを確実に押さえたうえで、株式の譲渡制限など効力に関わる相対的記載事項を検討する、という順番がわかりやすいでしょう。

電子定款の作り方|収入印紙4万円が不要になる仕組み

定款には、紙で作る紙定款と、PDFで作る電子定款の2つがあります。費用の差が大きいのはこの選択です。

電子定款にすると、紙の定款で必要な収入印紙4万円がかからなくなります。理由は印紙税の仕組みにあります。印紙税は「紙の文書」に課される税金で、電子データには課税されません。だから電子定款には印紙が不要になるわけです。

紙定款と電子定款の費用差

項目紙定款電子定款
収入印紙代4万円0円
認証手数料3万〜5万円3万〜5万円
謄本交付手数料など約2,000円約2,000円

電子定款を作る流れ

電子定款は、PDFにした定款へ電子署名を付ける形で作ります。自分で作る場合の流れは次のとおりです。

  1. 定款を作成し、PDF形式に変換する
  2. マイナンバーカードと電子署名の環境を用意する
  3. PDFに電子署名を付与する
  4. 公証役場とオンラインで認証手続きを行う(株式会社の場合)

問題は、電子署名にマイナンバーカード・ICカードリーダー・対応ソフトなどの環境が要ることです。設立1回のために環境をそろえると、印紙代の節約分が相殺されてしまうこともあります。

自分でそろえる人・ツールや専門家に任せる人

電子定款を「自前でやるか、任せるか」は、環境と手間で判断します。向き・不向きを整理すると次のようになります。

  • 自分でそろえるのが向く人:マイナンバーカードと電子署名環境がすでにあり、手続きの手間を惜しまない
  • ツール・専門家に任せるのが向く人:環境がない/時間を節約したい/確実に通したい

環境を持っていない場合は、行政書士・司法書士に依頼するか、電子定款に対応した設立支援ツールを使うのが現実的です。たとえば会社設立freeeとマネーフォワードの比較では、電子定款を自動で作成できるサービスを整理しています。印紙代の節約と手間のバランスは、会社設立費用の総まとめも合わせて見ると判断しやすくなります。

株式会社の設立登記に必要な書類一覧

定款の準備ができたら、法務局へ提出する登記書類をそろえます。株式会社の設立登記では、おおむね9種類の書類が必要です。

定款認証のときに用意するもの

まず、登記の前段にある定款認証で使うものを押さえます。株式会社だけの工程です。

  • 定款3通(保存用・会社用・謄本用)
  • 発起人全員の実印と印鑑証明書
  • 認証手数料(3万〜5万円)
  • 紙定款の場合は収入印紙4万円(電子定款は不要)

設立登記に必要な9つの書類

認証を終えたら、法務局へ次の書類を提出します。

株式会社の設立登記に必要な書類

#書類名用途
1設立登記申請書設立登記を申請するための書面
2登記すべき事項申請書に添付する登記内容(別紙・データ)
3登録免許税の収入印紙貼付台紙登録免許税(資本金の0.7%・最低15万円)の納付
4認証済みの定款公証役場で認証を受けた定款
5設立時取締役の就任承諾書取締役が就任を承諾した証明
6印鑑証明書設立時取締役の実印の証明
7本人確認証明書取締役・監査役の本人確認(住民票など)
8資本金の払込を証明する書面通帳コピーなど、払込の事実の証明
9印鑑届書会社の実印を法務局に登録する

このほか、本店の所在地を番地まで定款に書いていない場合は、発起人決定書(発起人会議事録)で本店所在地や資本金の額を定めて添付します。

払込を証明する書面は「会社の口座」ではなく「発起人個人の口座」への振込でそろえる点に注意してください。登記前は会社名義の口座がまだ作れないため、ここを勘違いしやすい部分です。

なお、合同会社では公証人の認証が不要なため、認証済み定款や一部の就任承諾書が省けるなど、必要書類が少なくなります。詳しい流れは合同会社の設立手順で確認できます。

本店所在地の決め方|定款は市区町村まででよい

定款の本店所在地は、悩みやすいポイントです。結論から言うと、定款には最小行政区画(市区町村)まで書けば足ります。番地まで書く必要はありません。

理由は、移転のしやすさにあります。番地まで定款に書くと、同じ市区町村内で引っ越すだけでも定款変更が必要になります。市区町村までにとどめておけば、その範囲内の移転では定款を変えずに済みます。具体的な番地は、発起人決定書で定めて登記します。

本店住所をどこにするかは、信用面や許認可にも関わります。自宅を使う、賃貸オフィスを借りる、バーチャルオフィスを使う、といった選択肢があります。バーチャルオフィスを検討する場合は、銀行口座の開設や業種ごとの許認可で使えるかを事前に確認してください。選び方はバーチャルオフィスの選び方で整理しています。

必要書類・定款でつまずきやすい4つのポイント

最後に、書類づくりで実際につまずきやすい場所をまとめます。先に知っておくだけで、差し戻しや手戻りを大きく減らせます。

  • 絶対的記載事項の漏れ:5項目のどれかが抜けると定款は無効です。目的・商号・本店所在地・出資される財産の価額・発起人を最初に確認します。
  • 事業目的の書き方:将来やる事業も書いておくと変更登記が不要になりますが、広げすぎると口座開設で不利になることもあり、バランスが大切です。
  • 本店所在地の書きすぎ:番地まで書くと移転で定款変更が必要になります。市区町村までにとどめます。
  • 払込口座の取り違え:払込は発起人の個人口座へ。会社口座は登記後でないと作れません。

これらは、定款と書類の「中身」に関するつまずきです。手続きの順番そのものでつまずかないためには、株式会社の設立手順(全体の流れ)で各ステップの位置づけを確認しておくと安心です。

よくある質問

会社設立の書類・定款について、初めての方から多い質問を整理しました。

Q1:発起人は何人まで必要ですか?

1名以上いれば設立できます。上限はとくにありません。発起人は必ず1株以上を引き受けて出資し、会社の成立後は株主になります。一人で起業する場合は、発起人・取締役ともに自分ひとりで問題ありません。

Q2:発起人と取締役は同じ人でもいいですか?

同じ人で構いません。発起人が自分自身を設立時取締役に選任すれば、成立後は株主と取締役を兼ねることになります。これが一人会社の典型的な形です。発起人が必ず取締役になる義務はなく、別の人を取締役にすることもできます。

Q3:定款の絶対的記載事項とは何ですか?

必ず記載する5項目を指します。目的・商号・本店の所在地・出資される財産の価額または最低額・発起人の氏名住所です。ひとつでも欠けると定款は無効になります。なお、4番目は「資本金額」そのものではなく出資額である点に注意してください。

Q4:電子定款と紙の定款はどちらがいいですか?

費用だけなら電子定款が有利です。電子定款は収入印紙4万円が不要になります。ただし電子署名の環境がない場合は、その準備に手間とコストがかかります。環境がないなら、行政書士・司法書士への依頼や、電子定款に対応した設立支援ツールの利用が現実的です。

Q5:合同会社でも定款の認証は必要ですか?

合同会社は認証が不要です。公証人の認証が必要なのは株式会社の定款だけです。そのため合同会社は認証手数料がかからず、必要書類も少なくなります。費用を抑えたい場合の選択肢になります。

Q6:本店所在地は番地まで定款に書くべきですか?

市区町村まで書けば足ります。番地まで書くと、同じ市区町村内の移転でも定款変更が必要になります。具体的な番地は発起人決定書で定めて登記するのが一般的です。将来の移転を考えると、定款は市区町村までにとどめるのが無難です。

まとめ

会社設立の必要書類は、定款・登記・払込の3グループで整理し、その中心に発起人がいる、という構図を押さえれば迷いません。最後に要点をまとめます。

この記事のまとめ
  • 必要書類は定款・登記・払込の3グループ。中心は発起人
  • 発起人は設立を企画し出資する人。成立後は株主になり、取締役は別途選任
  • 定款の絶対的記載事項は目的・商号・本店所在地・出資される財産の価額・発起人の5つ
  • 電子定款で収入印紙4万円が不要。環境がなければ専門家やツールに任せる
  • 株式会社は認証が必要、合同会社は認証が不要

定款と書類の中身が固まれば、あとは手順に沿って進めるだけです。設立全体の流れは株式会社の設立手順(全体の流れ)に、費用の内訳は会社設立費用の総まとめにまとめています。登記や税務の個別の判断は、法務局・司法書士・行政書士・税理士などの専門家にご確認のうえ進めてください。

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免責事項

※本記事は、会社法・日本公証人連合会・法務局・国税庁などの公開情報(2026年6月閲覧)をもとにした一般的な情報の整理です。制度・費用・手数料は変動し、手続きの法的効果や税務上の取り扱いは個別事情により異なります。定款の作成・認証、登記、税務など個別の判断は、司法書士・行政書士・税理士などの専門家にご確認ください。


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この記事を書いた人

行政書士事務所で4年間、会社設立の書類づくりや申請の補助をしていたHasegawaです。定款の作成から公証人の認証、法務局への登記申請まで、50件以上の手続きに関わってきました。

退職してから、自分でも合同会社を作ってみました。驚いたのは、手伝ってきた側なのに、いざ自分の名前で申請すると画面のどこを押せばいいのか手が止まったことです。公証役場に何を持っていくのか直前まで確認し直し、税務署への届出も順番を一つ勘違いしていました。

このサイトでは、50件以上の手続きで見えてきた「みんなが同じところでつまずくパターン」と、自分で一社作って分かったことを合わせて、合同会社や株式会社の作り方を整理しています。

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