会社設立を調べ始めると、「税理士に頼む」「司法書士に依頼」「自分でできる」と情報がバラバラに出てきて、結局誰に何を頼めばいいのかが分かりにくいものです。
理由はシンプルで、会社設立にかかわる専門家は税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士と複数おり、それぞれ任せられる仕事の範囲が法律で分かれているからです。さらに「設立費用0円」をうたう代行もあり、判断を迷わせます。
本記事では、依頼先ごとの役割と独占業務、費用相場、「0円代行」の裏側、自分でやる場合との損益分岐までを整理し、自分はどこに頼むのが正解かを判断できる形にまとめます。
この記事でわかること
- 会社設立の依頼先は5択(税理士・司法書士・行政書士・社労士・自分でやる)という全体像
- 各士業の独占業務の違い(登記=司法書士・許認可=行政書士・税務=税理士・社会保険=社労士)
- 依頼先別の費用相場と「何が含まれるか」
- 「設立手数料0円・代行0円」の裏側と、どこで費用が回収されるか
- 自分でやる vs 代行に頼む損益分岐の考え方と、依頼先を決める判断フロー
公的情報源: 法務省(登記)/日本司法書士会連合会/日本行政書士会連合会/国税庁(法人設立届)/厚生労働省(社会保険適用)
結論を先に書きます
会社設立そのもの(登記申請)の代行を頼めるのは、法律上司法書士だけです。税理士や行政書士は、登記を「自分で代行する」ことはできません。だから「税理士に会社設立を頼む」というのは、正確には税理士が窓口になり、提携先の司法書士が登記を担当するという形を指します。
ですから判断の軸は「税理士か司法書士か」ではなく、①許認可が必要な事業か ②設立後に税務顧問を付けたいか ③自分の時間をどれだけ割けるかの3点です。この3つで、最適な窓口は自然に決まります。
- 登記申請の代行は司法書士の独占業務。税理士・行政書士単独では登記を代行できない
- 「税理士に会社設立を依頼」=提携司法書士が登記を行うワンストップの意味であることが多い
- 費用相場は司法書士5〜15万円・税理士窓口0〜5万円(顧問契約が前提)が目安
- 「設立0円」は設立後の顧問契約や指定ソフト契約とのセットで成り立つ仕組み
- 許認可業種なら行政書士、税務顧問を付けるなら税理士窓口、手間より安さなら自分で設立が向く
会社設立の依頼先は5つ|税理士・司法書士・行政書士・社労士・自分でやる
会社設立の相談先は、大きく4つの士業+自分でやるの5択です。それぞれ守備範囲が違うため、まず全体像を押さえると迷いが減ります。
会社を作る工程は、ざっくり「①定款を作る → ②定款を認証する(株式会社のみ)→ ③法務局に登記申請する → ④税務・社会保険の届出を出す」という流れです。このどの工程を誰が担えるかが、依頼先選びの土台になります。
依頼先5択の早見表
| 依頼先 | 任せられる中心業務 | 費用感の目安 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 司法書士 | 登記申請(定款作成・認証手配・法務局提出) | 5〜15万円 | 登記をプロに確実に任せたい |
| 税理士(窓口) | 税務届出+提携司法書士で登記まで一括 | 0〜5万円(顧問前提) | 設立後の税務顧問もまとめたい |
| 行政書士 | 定款作成・各種許認可申請 | 3〜10万円+許認可 | 飲食・建設など許認可が要る事業 |
| 社会保険労務士 | 社会保険・労働保険の手続き | 設立後の顧問で対応 | 従業員を雇う予定がある |
| 自分でやる | すべて自力(ツール併用も可) | 実費のみ(数万円) | 手間より費用を抑えたい |
表のとおり、1人の専門家に全部を任せるのではなく、必要な工程ごとに担い手が分かれます。実務では士業同士が提携し、窓口1社に頼めば裏で連携して進む形が一般的です。
費用の総額そのものを先に把握したい人は、会社設立にかかる費用の総額もあわせて確認しておくと、依頼料が「高いのか妥当なのか」を判断しやすくなります。
各士業の独占業務を整理|「登記=司法書士」が大前提
依頼先選びでいちばん大事なのが、独占業務の理解です。独占業務とは「その資格を持つ人にしか、報酬を得て代行できない仕事」を指します。ここを取り違えると、依頼先選びそのものがずれてしまいます。
会社設立にかかわる4士業の独占業務は、次の4つに整理できます。
- 登記申請の代行 = 司法書士
- 許認可の申請代行 = 行政書士
- 税務申告・税務相談 = 税理士
- 社会保険・労働保険の手続き = 社会保険労務士
司法書士:登記申請の代行ができる唯一の士業
会社は、法務局への設立登記が完了して初めて成立します。この登記申請を報酬を得て代行できるのは、司法書士だけです(法務局に提出する登記書類の作成代理を含む)。
つまり、定款づくりから法務局への提出までを「丸ごと代わりにやってほしい」なら、最終的に司法書士が関与する必要があります。設立手続きの実体は登記なので、ここが土台だと押さえておきましょう。
行政書士:定款作成と許認可申請が守備範囲
行政書士は、定款の作成代理と、飲食・建設・運送・古物商などの許認可申請を担えます。許認可の申請代行は行政書士の独占業務で、ここは司法書士や税理士にはできません。
注意点は、行政書士は法務局への登記申請まではできないことです。定款作成までは行政書士、登記は司法書士、という役割分担になります。許認可が必要な業種なら、行政書士を起点にすると後工程がスムーズになりやすいです。
税理士:税務のプロだが、登記そのものはできない
税理士の独占業務は税務申告・税務相談・税務書類の作成です。会社設立後の法人税・消費税・役員報酬の設計など、お金まわりの相談に強いのが税理士です。
ただし、税理士は登記を自分で代行することはできません。だから「会社設立を税理士に頼む」と言うときの実態は、税理士が窓口になり、提携先の司法書士が登記を実行する形です。広告で「設立を税理士が代行」と書かれていても、登記部分は司法書士が担っている、と理解しておくと誤解がありません。
社会保険労務士:人を雇うなら必要になる
社会保険労務士(社労士)は、社会保険・労働保険の手続き、就業規則の作成などを担います。法人は代表者1人でも社会保険の加入義務がありますが(厚生労働省:社会保険適用)、設立時の届出だけなら税理士や自分でも対応できます。
社労士が真価を発揮するのは、従業員を雇う段階です。設立直後に一人会社で始めるなら、まずは登記と税務に集中し、社労士は採用が見えてから検討するので十分なケースが多いです。
設立後にどんな届出や手続きが必要かは、会社設立後にやることチェックリストに時系列でまとめています。

依頼先別の費用相場|いくらかかるか
次に気になるのが費用です。依頼先によって、何が含まれてその金額なのかが変わります。「安い=得」とは限らないので、含まれる範囲とセットで見るのがコツです。
依頼先別の費用相場(代行料・実費は別)
| 依頼先 | 代行料の相場 | 含まれる範囲 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 司法書士 | 5〜15万円 | 定款作成・認証手配・登記申請 | 登記を確実に任せられる |
| 税理士(窓口) | 0〜5万円 | 税務届出+提携司法書士で登記 | 設立後の顧問契約が条件のことが多い |
| 行政書士 | 3〜10万円+許認可費用 | 定款作成・許認可申請 | 登記は別途司法書士が必要 |
| 自分でやる | 0円(実費のみ) | すべて自力 | 不備による差し戻しのリスク |
ここで注意したいのが、この代行料とは別に「登記の実費」がかかる点です。登録免許税(合同会社6万円・株式会社15万円〜)や定款認証手数料などは、誰に頼んでも発生します。実費の内訳は会社設立費用の総額と内訳で詳しく整理しています。
税理士窓口の「0〜5万円」は一見いちばん安く見えますが、これは設立後の顧問契約とセットで成り立っている価格であることがほとんどです。次の章で、その仕組みを掘り下げます。
「設立手数料0円・代行0円」の裏側|どこで費用が回収されるか
「会社設立手数料0円」「代行費用0円」という広告は珍しくありません。ただ、専門家がタダで手間のかかる手続きを代行するわけではなく、別のところで費用を回収する仕組みが裏にあります。ここを知らずに飛びつくと、結果的に割高になることがあります。
0円の正体は「顧問契約とのセット」
0円代行でいちばん多いのが、設立後に税理士と顧問契約を結ぶことを条件にするパターンです。税理士側は、顧問契約を1社獲得すれば毎月の顧問料と決算料で年間数十万円の売上になります。だから設立代行を無料にしても、後で十分に回収できる、という構造です。
これ自体は悪い話ではありません。もともと税務顧問を付けるつもりなら、設立代行が無料になる分むしろお得になり得ます。問題は「顧問は要らないのに0円につられて契約してしまう」ケースです。
回収のされ方は主に3パターン
0円の費用がどこで回収されるかは、おおむね次のどれかです。契約前に「条件は何か」を事前に確認しておくと、後悔を避けられます。
- 設立後の税務顧問契約(毎月の顧問料・決算料)
- 相場より高めに設定された顧問料での回収
- 指定の会計ソフト年間契約・備品購入など抱き合わせ条件
とくに気をつけたいのが2番目です。設立代行を割り引いた分を、相場より高い顧問料で取り戻す設計になっていることがあります。月数千円の差でも、数年単位では大きな差になります。顧問料の相場感とあわせて比較するのが安全です。
0円を賢く使う条件
整理すると、0円代行が得になるのは「もとから税務顧問を付ける予定で、提示された顧問料が相場の範囲内」のときです。逆に、一人会社で当面は自分で記帳するつもりなら、0円代行より自分で設立してしまう方が結局安いことも多いです。
自分で安く設立する具体的な手段としては、会社設立ツールの活用があります。書類作成が無料ででき、電子定款の印紙代4万円も浮くため、顧問を付けない人と相性が良い方法です。詳しくはfreeeとマネーフォワードの会社設立比較で違いを整理しています。
自分で設立する vs 代行に頼む|損益分岐の考え方
費用だけを見れば、自分で設立するのがいちばん安く済みます。一方で、手続きには時間と手間がかかります。判断のポイントは「浮く代行料」と「かかる時間コスト」のどちらが大きいか、です。
自分でやると浮くお金・かかる手間
自分で設立した場合、浮くのは代行料の5〜15万円です。ただし、定款の作成、(株式会社なら)公証役場での認証、法務局での登記申請を自力で進める必要があり、慣れていないと準備から完了まで2〜4週間ほどかかることもあります。書類に不備があると差し戻しになり、さらに時間が延びます。
会社設立ツールを使えば、書類作成の負担はかなり軽くなります。手順の全体像は、合同会社設立の手順や株式会社設立の手順で確認できます。

こんな人は自分で設立が向く
- 合同会社で一人会社を作る:手続きが比較的シンプルで自力でも進めやすい
- 許認可が要らない事業:行政書士の関与が不要で工程が少ない
- 当面は税務顧問を付けない:顧問前提の0円代行のメリットが効かない
- 準備に数週間を割ける:時間コストより費用節約を優先したい
こんな人は代行・専門家依頼が向く
- 株式会社を設立する:定款認証など工程が多く、ミスのリスクを避けたい
- 許認可が必要な業種:飲食・建設・運送・古物商などは行政書士が必要
- 設立後すぐ税務顧問を付けたい:税理士窓口のワンストップが効率的
- 本業が忙しく時間が取れない:浮く時間を事業の立ち上げに回せる
ざっくりした損益分岐の目安は、「設立の手間に充てる数週間で、代行料以上の価値を生めるか」です。立ち上げ準備で手いっぱいなら代行、時間に余裕があり費用を抑えたいなら自分で、という分け方が現実的です。
依頼先を決める判断フロー|3つの質問で絞り込む
ここまでを踏まえると、依頼先は3つの質問でほぼ決まります。上から順に当てはめてみてください。
- 許認可が必要な事業か? → 必要なら行政書士を起点に
- 設立後すぐ税務顧問を付けたいか? → 付けるなら税理士窓口(顧問とセットで設立も)
- 登記だけ確実に任せたいか/時間に余裕があるか? → 司法書士単体 or 自分で設立
質問1:許認可が必要な事業か
飲食店・建設業・運送業・古物商・人材派遣などは、設立後に許認可がないと営業できません。許認可申請は行政書士の独占業務なので、こうした業種は行政書士を最初に通すと、定款の事業目的の書き方から許認可まで一貫し、後の二度手間が減ります。
質問2:設立後すぐ税務顧問を付けたいか
「記帳や決算を自分でやる自信がない」「最初から節税も相談したい」なら、税理士を窓口にするのが効率的です。提携司法書士で登記まで一括で進み、設立代行が無料になるケースもあります。ただし前章のとおり、顧問料が相場の範囲かを事前に確認しましょう。
質問3:登記だけ任せたい/時間に余裕がある
許認可も税務顧問も当面不要で、「登記だけプロに確実に任せたい」なら司法書士単体に依頼するのが素直です。費用も時間もとことん抑えたいなら、自分で設立(ツール併用)が選択肢になります。一人会社の合同会社なら、自力設立のハードルは比較的低めです。
よくある質問
会社設立の依頼先について、相談で頻出する質問を整理します。

Q1:会社設立は税理士と司法書士のどちらに頼むべきですか?
登記だけを確実に任せたいなら司法書士、設立後の税務顧問もまとめたいなら税理士窓口が向いています。登記の代行自体は司法書士の独占業務なので、税理士に頼む場合も裏では提携司法書士が登記を担当します。設立後に顧問を付ける予定があるかどうかが、最初の分かれ道です。
Q2:税理士は会社設立の登記をしてくれないのですか?
税理士は税務の専門家で、登記申請そのものを報酬を得て代行することはできません。「税理士に会社設立を依頼」という場合は、税理士が窓口となり、提携する司法書士が登記を実行する形が一般的です。税務届出や役員報酬の設計など、お金まわりは税理士の得意分野です。
Q3:会社設立を自分でやるのは難しいですか?
合同会社の一人会社なら、自分でも十分に可能です。会社設立ツールを使えば書類作成の負担も軽くなります。一方で、株式会社は定款認証など工程が多く、書類不備による差し戻しのリスクもあります。時間に余裕があるかどうかで判断するとよいでしょう。
Q4:「設立費用0円」の代行は本当にお得ですか?
設立後の顧問契約が条件になっていることがほとんどです。もとから税務顧問を付ける予定なら、設立代行が無料になる分お得になり得ます。ただし、割り引いた分が相場より高い顧問料や指定ソフトの年間契約で回収される設計もあるため、契約前に条件を確認することが大切です。
Q5:許認可が必要な事業は誰に頼めばいいですか?
飲食・建設・運送・古物商などの許認可申請は行政書士の独占業務です。許認可が要る業種は、行政書士を起点にすると、定款の事業目的の書き方から許認可までを一貫して相談でき、後の手戻りが減ります。登記部分は提携司法書士が担当します。
Q6:依頼先は1人にまとめられますか?
窓口は1社にまとめられます。士業同士は提携していることが多く、税理士や司法書士の事務所に依頼すれば、登記・税務・許認可を裏で連携して進めてくれます。複数の専門家に個別連絡する手間を省きたいなら、ワンストップ対応の事務所を選ぶとよいでしょう。
まとめ|「税理士か司法書士か」より「許認可・税務顧問・時間」で決める
会社設立の依頼先は、肩書きで選ぶより、自分の状況で選ぶのが近道です。最後に要点を整理します。
- 登記申請の代行は司法書士の独占業務。税理士・行政書士は単独で登記を代行できない
- 「税理士に会社設立を依頼」=提携司法書士が登記を行うワンストップの意味
- 費用相場は司法書士5〜15万円・税理士窓口0〜5万円(顧問前提)(登記実費は別途)
- 「設立0円」は顧問契約や指定ソフト契約とのセットで成り立つ仕組み
- 判断軸は①許認可の有無 ②税務顧問の要否 ③割ける時間の3つ
- 許認可業種は行政書士、税務顧問なら税理士窓口、安さ重視なら自分で設立が向く
「税理士か司法書士か」で迷ったら、まず許認可の有無・税務顧問の要否・割ける時間の3点を自分に問い直してみてください。そこが決まれば、頼むべき窓口は自然と見えてきます。具体的な税務や登記の判断は、税理士・司法書士・行政書士などの専門家へご相談ください。
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免責事項
※本記事は会社設立・法人化に関する公開情報をもとにした整理です。各士業の業務範囲・費用・税務の取扱いは制度改正や個別事情により変わります。最終的な判断は法務省・国税庁等の公的情報をご確認のうえ、個別の判断は税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士などの専門家へご相談ください。
