発起人とは?役割・責任と一人でもなれるかを解説

会社をつくろうと調べ始めると、最初に出てくるのが「発起人(ほっきにん)」という耳慣れない言葉です。「自分ひとりで起業したいけれど、発起人って何人いるの?」「重い責任を負わされるのでは?」と不安になる方も少なくありません。

結論から言うと、発起人とは会社設立を企画して出資する人のことで、一人でも問題なく設立できます。特別な資格も要りません。

この記事では、発起人の役割、会社法が定める責任、資格や人数の要件、そして株主・取締役との違いまでを、会社設立の補助を50件超えてきた立場と、自分で会社をつくった経験をもとに整理します。

発起人とは、会社設立を企画し、定款を作成して出資する人です。株式会社は1名以上の発起人が必要で、各自が1株以上を引き受けます。資格の制限はなく、一人でも設立でき、成立後は株主になります。

この記事でわかること

  • 発起人とは設立を企画し、定款を作り、出資する人。定款に署名した時点で発起人になる
  • 役割は①定款作成 ②資本金の出資 ③設立時役員の選任の3つ
  • 発起人は1名以上・資格の制限なし。未成年や法人でもなれ、一人でも設立できる
  • 責任は会社法52〜56条。現物出資や仮装払込がなければ、通常はまず問われない
  • 成立後は株主になり、経営する取締役とは立場が分かれる

公的情報源: e-Gov 会社法(参照)/法務省「会社の設立」(参照)(2026年7月閲覧)

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結論を先に書きます

発起人は、会社設立の「言い出しっぺ」であり、出資者であり、手続きの実行者です。定款を作って署名し、資本金を払い込み、最初の役員を選ぶ——この3つが中心的な役割になります。

人数は1名以上で上限はなく、資格の制限もありません。だから一人でも、未成年でも、法人でも発起人になれます。会社が成立すると発起人は株主になり、経営を担う取締役とは立場が分かれます。

この記事の要点
  • 発起人=設立を企画し出資する人。定款に署名・記名押印した時点で発起人になる(会社法26条)
  • 役割は定款作成・出資・設立時役員選任の3つ
  • 人数は1名以上、各自が1株以上を引き受ける(会社法25条2項)
  • 資格の制限はなく、一人・未成年・法人でも可能
  • 責任は会社法52〜56条にあるが、現物出資・仮装払込がなければ通常は問われない

目次

発起人とは|会社設立を企画し出資する人

発起人とは、会社の設立を企画し、定款を作成して出資する人のことです。かみくだくと「会社をつくろう」と言い出し、中心になって手続きを進める人を指します。

ここで意外と知られていないのが、発起人になるタイミングです。発起人は、定款に署名または記名押印した時点で正式に発起人になります(会社法26条)。肩書きを名乗るかどうかではなく、定款という書面への署名で確定するわけです。

補助の現場でも、「発起人って役職なんですか?」とよく聞かれました。発起人は取締役のような会社の機関ではなく、設立の準備段階だけに登場する一時的な立場です。会社が成立すれば、その役目は終わります。

発起人は必ず1株以上を出資する

発起人のもうひとつの特徴が、必ず出資する点です。会社法25条2項では、各発起人は設立に際して1株以上を引き受けなければならないと定められています。

つまり発起人は、単なる「手続き係」ではなく、自分のお金を会社に入れる出資者でもあります。この点が、あとで説明する取締役との大きな違いになります。

発起設立と募集設立の違い

会社の設立方法には、発起設立と募集設立の2種類があります。この違いを知っておくと、「一人で設立できる理由」がすっと理解できます。

2つの設立方法の違い

設立方法株式の引き受け方向いているケース
発起設立発起人が設立時の株式をすべて引き受ける一人・少人数での起業(大半はこちら)
募集設立発起人以外にも出資者を募集する設立時から広く資本を集めたいとき

一人での起業でよく使われるのが発起設立です。発起人が全部の株式を引き受けるので、外部から出資者を集める必要がありません。設立全体の流れは株式会社の設立手順(全体の流れ)で確認できます。

発起人の3つの役割

発起人の役割は、①定款の作成 ②資本金の出資 ③設立時役員の選任の3つに整理できます。この3つで会社の骨格が決まります。

まずは全体像を図で押さえてください。発起人が動いて会社が成立し、そのあと発起人自身が株主になる、という流れです。

発起人は定款作成・出資・設立時役員選任を行い、会社成立後は株主になる
図:発起人の3つの役割(定款作成・出資・役員選任)と、成立後は株主になる流れ

役割1:定款を作成する

最初の仕事が定款づくりです。定款とは、会社の目的・商号・本店所在地などの基本ルールを定めた書面で、会社の憲法とも呼ばれます。

発起人はこの定款を作成し、全員が署名または記名押印します。株式会社の場合は、作った定款を公証役場で認証してもらう必要があります。定款の中身や記載事項は会社設立の必要書類と定款の作り方で詳しく整理しています。

役割2:資本金を出資する

次に、発起人は資本金を払い込みます。前述のとおり、各発起人は1株以上を引き受けるため、必ずいくらかの出資をします。

このとき注意したいのが、払込先は「発起人個人の口座」である点です。設立前は会社名義の口座がまだ作れないため、発起人の口座に振り込み、その通帳コピーで払込を証明します。

役割3:設立時役員を選ぶ

3つ目が、設立時取締役など最初の役員を選任する役割です。誰を会社の経営者にするかを、発起人が決めます。

一人で起業する場合は、発起人が自分自身を設立時取締役に選ぶのが一般的です。この結果、成立後は株主(オーナー)と取締役(経営者)を兼ねることになります。

発起人と株主・取締役の違い

発起人・株主・取締役は混同しやすいので、立場の違いを整理します。ポイントは「いつの・どんな役割か」です。

先に結論を言うと、発起人は「設立を動かす一時的な立場」、株主は「会社のオーナー」、取締役は「経営者」です。次の図で関係をつかんでください。

発起人は設立準備の立場で成立後は株主になり、経営する取締役とは分かれる
図:発起人(準備段階)・株主(オーナー)・取締役(経営者)の役割と立場の違い

表でも対比しておきます。発起人は会社が成立するとそのまま株主になり、取締役になるかどうかは選任次第、という点が肝心です。

発起人・株主・取締役の違い

立場役割いつの立場か選ばれ方
発起人設立を企画し、定款作成・出資・役員選任を行う設立の準備段階定款に署名した人
株主出資して会社のオーナーになる会社の成立後発起人がそのまま株主に
取締役株主から委任され会社を経営する会社の成立後発起人が選任する

発起人が必ず取締役になるわけではありません。発起人は出資者(株主)にはなりますが、経営を別の人に任せることもできます。株主と役員の関係をもっと知りたい方は株式会社とは?仕組み・株主と役員の関係もあわせてご覧ください。

発起人は一人でもなれる|資格・人数の要件

発起人は一人でもなれます。会社法上、株式会社は1名以上の発起人がいれば設立でき、上限もありません。ここは多くの方が心配する点ですが、心配は不要です。

さらに、発起人になるための特別な資格や条件もありません。次のような人でも発起人になれます。

  1. 個人(成人):もっとも一般的なケース
  2. 未成年者:原則として親権者の同意が必要
  3. 外国籍の人:日本在住かどうかを問わず可能
  4. 法人:会社が別の会社の発起人になることもできる

つまり、「一人・資格なし」で設立できるのが発起人です。実際、私が補助してきた設立の多くは、社長がひとりで発起人になり、そのまま設立時取締役も兼ねる形でした。

一人発起人でも「発起人決定書」が要ることがある

一人で気をつけたいのが、書類の落とし穴です。発起人が一人でも、本店の具体的な住所(番地)や資本金額を定款に書かない場合は、「発起人決定書」で定めて添付します。

定款には本店所在地を市区町村までしか書かないのが一般的で、番地はこの発起人決定書で確定させます。一人だからといって、書類が完全に省けるわけではない点は覚えておいてください。必要書類の全体像は会社設立の必要書類と定款の作り方で確認できます。

一人での設立は、定款や払込証明などの書類をすべて自分でそろえる必要があります。設立支援ツールを使えば、質問に答えるだけで発起人欄を含む書類が自動で作成でき、電子定款で収入印紙4万円も節約できます。

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発起人の責任|どこまで問われるのか

発起人には、会社法上の責任があります。ただし先に結論を言うと、現物出資や仮装払込などをしなければ、通常はまず問われません。過度に恐れる必要はありません。

会社法が定める発起人の主な責任は、次のように分類できます。

発起人の責任は財産価額填補・仮装払込・任務懈怠・会社不成立の会社法52〜56条
図:発起人の責任は出資まわり・任務懈怠・会社不成立の3類型(現物出資や仮装払込がなければ通常は問われない)

それぞれの中身を整理します。専門的に見えますが、要は「出資まわりで嘘やごまかしをすると責任を負う」という話です。

発起人の主な責任(会社法)

条文責任の内容現実に問われる場面
52条現物出資などの財産の価額が定款記載額に著しく不足した場合、不足額を支払う(財産価額填補責任)現物出資を過大に評価したとき
52条の2出資の払込を仮装した場合、その全額を支払う見せ金など仮装払込をしたとき
53条任務を怠って会社や第三者に損害を与えた場合の損害賠償調査を怠るなど注意義務違反があったとき
54条発起人が複数のとき、上記の責任は連帯共同発起人の一人に問題があったとき
56条会社が成立しなかった場合、設立費用を連帯して負担(無過失責任)設立が途中で頓挫したとき

大切なのは、これらの責任が「現金でまっとうに出資し、定款どおりに手続きを進めれば、まず発生しない」という点です。とくに問題になりやすいのは、現物出資の過大評価見せ金による仮装払込の2つです。

なお、財産価額填補責任などは、総株主の同意があれば免除できるとされています(会社法55条)。一人会社なら、自分の同意で免除できる場面もあるということです。税務・法務の個別判断は、司法書士や税理士などの専門家に確認しながら進めると安心です。

発起人を複数にするときの注意点

一人ではなく、共同で発起人になるケースもあります。その場合に最も大切なのが、誰が何株を持つか(持株比率)です。ここを決めずに進めると、あとで意思決定が動かなくなります。

株式会社では、持株比率によって株主総会での決定権が変わります。目安は次のとおりです。

  • 過半数(1/2超):役員選任など普通決議を単独で通せる
  • 3分の2以上:定款変更など特別決議を単独で通せる
  • 3分の1超:特別決議を単独で否決できる

とくに気をつけたいのが、2人で50%ずつという均等出資です。一見フェアですが、意見が割れると何も決められない「デッドロック」に陥りやすくなります。

共同で始めるなら、代表者が最低でも過半数、できれば3分の2以上を持つ設計にしておくと、経営判断がスムーズです。出資額と持株比率のバランスは、会社設立にかかる費用の総額で資本金の考え方とあわせて確認するとイメージしやすくなります。

よくある質問

発起人について、初めての方から多い質問を整理しました。

Q1:発起人は一人でもなれますか?

一人でもなれます。株式会社は1名以上の発起人がいれば設立でき、上限はありません。一人の場合は、発起人・出資者(株主)・設立時取締役をすべて自分が兼ねるのが一般的です。100%の株主として、意思決定を自分ひとりで進められます。

Q2:発起人に資格や条件はありますか?

特別な資格や条件はありません。個人はもちろん、未成年者(原則として親権者の同意が必要)、外国籍の人、法人でも発起人になれます。ただし各発起人は1株以上を引き受けて出資する必要があります。

Q3:発起人と取締役の違いは何ですか?

発起人は設立準備の役、取締役は成立後の経営者です。発起人は定款作成・出資・役員選任を行い、会社が成立するとその役目を終えます。発起人はそのまま株主になりますが、取締役になるかどうかは選任次第で、必ず取締役になるわけではありません。

Q4:発起人は会社設立後どうなりますか?

そのまま株主になります。発起人は必ず1株以上を引き受けているため、成立と同時に出資者=株主になります。加えて自分を設立時取締役に選任していれば、株主と取締役を兼ねます。一人会社の典型的な形です。

Q5:発起人の責任はどこまで問われますか?

現物出資や仮装払込がなければ、通常はまず問われません。会社法52〜56条に、財産価額の填補や仮装払込の支払、任務懈怠の損害賠償などが定められています。現金でまっとうに出資し、定款どおり手続きすれば発生しにくい責任です。問題になりやすいのは現物出資の過大評価と見せ金です。

Q6:発起人は途中で変更や追加ができますか?

定款の認証前であれば、比較的柔軟に変更できます。発起人は定款に記載する事項のため、認証後に変更すると手続きがやり直しになることがあります。誰を発起人にするか、持株比率をどうするかは、定款を作る前に固めておくのが安全です。

まとめ

発起人とは、会社設立を企画し、定款を作って出資する人です。設立の準備段階だけの一時的な立場で、会社が成立すると株主になります。最後に要点をまとめます。

この記事のまとめ
  • 発起人は定款作成・出資・設立時役員選任が3つの役割
  • 定款に署名した時点で発起人になり、1株以上を出資する(会社法25条2項・26条)
  • 人数は1名以上・資格の制限なし。一人・未成年・法人でも可能
  • 責任は会社法52〜56条だが、現物出資・仮装払込がなければ通常は問われない
  • 複数で始めるなら持株比率を決め、50:50のデッドロックを避ける

発起人の位置づけが分かれば、あとは手順に沿って進めるだけです。設立全体の流れは株式会社の設立手順(全体の流れ)に、必要書類と定款の作り方は会社設立の必要書類と定款の作り方にまとめています。

発起人欄を含む定款や設立書類は、無料の設立支援ツールなら質問に答えるだけで自動作成できます。電子定款に対応していれば、紙の定款でかかる収入印紙4万円も不要になります。まずは条件を確認してみてください。

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免責事項

※本記事は、会社法・法務省などの公開情報(2026年7月閲覧)をもとにした一般的な情報の整理です。制度・手続きの要件は変動し、法的効果や税務上の取り扱いは個別事情により異なります。定款の作成・認証、登記、発起人や責任に関する個別の判断は、司法書士・行政書士・税理士などの専門家にご確認ください。


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この記事を書いた人

行政書士事務所で4年間、会社設立の書類づくりや申請の補助をしていたHasegawaです。定款の作成から公証人の認証、法務局への登記申請まで、50件以上の手続きに関わってきました。

退職してから、自分でも合同会社を作ってみました。驚いたのは、手伝ってきた側なのに、いざ自分の名前で申請すると画面のどこを押せばいいのか手が止まったことです。公証役場に何を持っていくのか直前まで確認し直し、税務署への届出も順番を一つ勘違いしていました。

このサイトでは、50件以上の手続きで見えてきた「みんなが同じところでつまずくパターン」と、自分で一社作って分かったことを合わせて、合同会社や株式会社の作り方を整理しています。

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