勤怠管理は義務?初めて人を雇う会社がやること

勤怠管理は義務?

勤怠管理は義務です。従業員を1人でも雇えば、会社は始業・終業の時刻を確認して記録し、2019年4月からはタイムカードやパソコンの使用時間などの客観的な方法で労働時間の状況を把握することが、すべての事業者に求められています。

この記事でわかること

  • 勤怠管理が会社の義務になる2つの根拠
  • 何を記録すればよいか(出勤簿の押印だけでは足りない)
  • 管理監督者や役員の時間はどう扱うか
  • 記録の保存期間(原則5年・当分の間3年)
  • 小さな会社が選べる勤怠管理の方法と、人を雇う前の準備の順番

一次情報: 青森労働局「労働時間の状況の把握方法に問題はございませんか?」/厚生労働省「賃金台帳等の労働契約関係の書類の保存期間は何年ですか?」(いずれも2026年10月閲覧)

会社を作ってしばらくは役員だけで回していても、仕事が増えるとアルバイトや社員を迎える日が来ます。そのときに慌てやすいのが、労働時間の記録です。

給与計算の前に、そもそも何を記録しておく決まりなのかを知っておくと、仕組みを選ぶのも楽になります。ここでは法律で求められていることと、小さな会社が無理なく続けられる方法を順に整理しました。

目次

勤怠管理は会社の義務

勤怠管理は、人を雇う会社の義務です。根拠は大きく2つあり、労働基準法にもとづいて労働時間を適正に把握するための厚生労働省のガイドラインと、2019年4月に施行された改正労働安全衛生法です。

勤怠管理が義務になる2つの根拠

労働時間の適正な把握(ガイドライン)
目的
残業代を含めた賃金を正しく払う
やること
始業・終業の時刻を確認し、記録する
対象外
管理監督者、みなし労働時間制の人
労働時間の状況の把握(安衛法)
目的
長時間労働の人の健康を守る
やること
客観的な方法で出退勤を把握する
対象
2019年4月から、すべての事業者

図:賃金のための記録と、健康を守るための把握。両方が会社に求められる

2019年4月から、すべての事業者に

青森労働局のリーフレットでは、2019年4月1日施行の改正労働安全衛生法などにより、すべての事業者に次の方法で労働時間の状況を客観的に把握することが義務付けられたと説明されています(労働安全衛生法第66条の8の3、同法施行規則第52条の7の3)。

  • タイムカードによる記録
  • パソコンなどの使用時間(ログインからログアウトまで)の記録
  • その他の適切な方法

会社の規模による例外は書かれていません。社員が1人の会社でも、人を雇った時点で対象になると考えておきましょう。

出勤簿のハンコだけでは足りない

同じリーフレットには、出勤簿の押印だけでは、労働時間の状況を把握しているとは言えませんとはっきり書かれています。出勤した日に印を押すだけでは、何時から何時まで働いたかがわからないからです。

小さな会社でよくあるのが、紙の出勤簿に印だけ押してもらう運用です。人を雇う前に、時刻まで残る方法へ切り替えておきましょう。

記録しなければならないこと

記録の基本は、労働日ごとの始業と終業の時刻です。滋賀労働局の資料にあるガイドラインの概要では、使用者が労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録することが求められています。

労働時間の確認と記録の方法(ガイドラインの概要)

方法中身小さな会社での例
原則の方法使用者が自分の目で確認する代表者が出退勤に立ち会う
原則の方法タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間などの客観的な記録をもとに確認する打刻機、クラウドの勤怠管理
やむを得ない場合自己申告制直行直帰が多い仕事など

自己申告制にするなら守ること

外回りが多く、どうしても自己申告に頼る場合は、ガイドラインで決められた措置を守ってください。主なものは次のとおりです。

  1. 申告する人と管理する人に、正しく申告するよう十分に説明する
  2. 申告した時間と、入退場の記録やパソコンの使用時間との間に大きなずれがあれば、実態を調べて補正する
  3. 申告できる時間に上限を設けるなど、正しい申告を妨げる仕組みを作らない

「残業は月○時間まで」と申告の上限を決めてしまうのは、3つ目に当たります。申告の仕組みを作るときに気をつけてください。

健康を守るための把握は時間外の時間で見る

三重労働局の資料では、安衛法の労働時間の状況は、長時間労働の人への医師の面接指導が要るかどうかを判断するために使うとされています。判断に使うのは、休憩を除いて1週間40時間を超えた時間外・休日労働の時間です。

管理監督者や役員の時間はどう扱う?

管理監督者は、労働基準法側のガイドラインの対象からは外れます。ただし安衛法の労働時間の状況の把握では、管理監督者も記録が要る点に注意が必要です。

三重労働局の資料では、労働時間の状況の把握は賃金台帳に記入した労働時間数で代えられるとしたうえで、管理監督者等は「この限りではありません」とされています。賃金台帳に時間を書かない管理監督者も、別に出退勤を把握しておく必要があるという意味です。

誰の時間を記録するか

  • 雇っている人は、立場にかかわらず出退勤を把握する
    • 社員・パート・アルバイト始業・終業の時刻を記録する。賃金計算の元になる
    • 管理監督者ガイドラインの対象外でも、安衛法の把握は必要
    • 代表者・役員雇われている人ではないため、通常は記録の対象に入らない

図:役員だけの会社は対象外。1人でも雇えば記録が始まる

「管理職だから記録しない」は通らない

管理監督者かどうかは、役職の名前ではなく職務の内容で判断されます。滋賀労働局の資料でも、管理監督者は「役職名にとらわれず職務の内容等から実態に即して判断」されるとしています。

小さな会社で「店長」「マネージャー」の肩書を付けていても、管理監督者とは限りません。肩書にかかわらず、雇っている人の時間は記録しておくのが安全です。

記録の保存期間

出勤簿やタイムカードなどの記録は、原則5年、当分の間は3年の保存が求められます。厚生労働省のスタートアップ労働条件のQ&Aでは、労働関係の書類の保存期間は5年に延び、経過措置として当分の間は3年という扱いです。

労働関係の書類の保存期間(厚生労働省 Q&A・2026年10月閲覧)

項目期間根拠
保存の原則5年労働基準法第109条
当分の間の経過措置3年労働基準法第143条第1項
退職金の請求の時効5年同Q&Aの説明

同じQ&Aでは、退職金の時効が5年であることや時効の更新があることから、3年を過ぎても書類が必要になることが多いとしています。これから仕組みを作る会社は、最初から5年保存を前提にすると後で困りません。

小さな会社が選べる勤怠管理の方法

方法は、紙、表計算ソフト、打刻機、クラウドの勤怠管理の4つが中心です。どれでも始業・終業の時刻が残ることが条件で、選ぶ基準は人数と働く場所です。

勤怠管理の方法の比べ方

方法時刻の記録向いている会社気をつけたい点
紙の出勤簿時刻を手書きする場合のみ当面は使わない押印だけでは不十分
表計算ソフト本人の入力(自己申告)1〜2名で、同じ場所で働く申告とのずれの確認が要る
タイムカード・打刻機打刻した時刻が残る店舗や事務所に毎日出勤する集計と保存の手間
クラウドの勤怠管理スマホやPCの打刻が残る在宅・外回り・複数の拠点月額の利用料がかかる

方法の選び方

  • 始業・終業の時刻が残ることが前提
  • 1全員が同じ事務所や店舗で働くタイムカードや打刻機。人数が増えたらクラウドへ
  • 2在宅や外回り、直行直帰があるスマホで打刻できるクラウドの勤怠管理
  • 3雇うのは1〜2名で、同じ場所表計算ソフトでも始められる。ずれの確認を決めておく

給与計算のやり方とつながるかも、選ぶときの目安になる。

図:働く場所がばらばらなほど、スマホで打刻できる方法が合う

給与計算とのつながりで選ぶ

勤怠の記録は、そのまま給与計算と残業代の計算に使います。会計ソフトや給与計算ソフトを使っているなら、勤怠のデータを取り込めるかも見ておくと、毎月の集計が楽になるはずです。

クラウドの勤怠管理には、無料で始められるプランや資料請求で比べられるサービスもあります。人数が増えてから入れ替えるより、最初の1人を雇う前に決めておくほうが、記録の形式をそろえやすいでしょう。

初めて人を雇う前の準備の順番

勤怠管理の準備は、人を雇う手続きと一緒に進めるのが効率的です。雇用契約や社会保険の手続きと同じ時期に、記録の方法と保存のルールを決めておきましょう。

  1. 働く時間と休憩、休日を決め、雇用契約書や労働条件通知書に書く
  2. 始業・終業の時刻が残る記録の方法を選ぶ
  3. 残業を申請・承認するルールを決める
  4. 記録を5年保存する場所と形式を決める
  5. 給与の締め日と、勤怠を集計する日をそろえる

社会保険の負担や、役員報酬とのバランスも同じ時期に考えることになります。費用の見通しは法人化すると社会保険はどう変わる?で整理しています。

クラウドの勤怠管理を早めに入れたい会社

  • 在宅勤務や外回りで、働く場所がそろわない
  • 半年以内に、2人目・3人目を雇う予定がある
  • 給与計算を会計ソフトやクラウドで済ませている

まずは打刻機や表計算ソフトで足りる会社

  • 雇うのはアルバイト1名で、毎日同じ店舗で働く
  • 残業がほとんどなく、勤務の時間帯が決まっている

よくある質問

Q1:従業員が1人だけでも勤怠管理は必要ですか?

必要です。青森労働局のリーフレットでは、2019年4月から「すべての事業者」に労働時間の状況の客観的な把握が義務付けられたとしています。人数による例外は書かれていません。

Q2:タイムカードは法律で決められていますか?

タイムカードそのものが必須なわけではありません。タイムカードの記録、パソコンの使用時間の記録、その他の適切な方法のいずれかで、客観的に把握することが求められています。出勤簿の押印だけでは足りません。

Q3:社長や役員も勤怠管理が必要ですか?

代表者や役員は雇われている人ではないため、通常は記録の対象に入りません。ただし管理監督者として雇っている社員は、安衛法の労働時間の状況の把握が必要です。

Q4:勤怠の記録は何年保存すればいいですか?

原則5年で、経過措置として当分の間は3年とされています。退職金の時効は5年なので、厚生労働省のQ&Aも3年を過ぎて書類が必要になることがあるとしています。最初から5年保存にしておくと安心です。

Q5:Excelで勤怠管理をしても大丈夫ですか?

本人が時刻を入力するExcelは、自己申告制に当たります。ガイドラインでは、申告とパソコンの使用時間などに大きなずれがあれば実態を調べて補正することなどが求められます。人数が少ないうちの方法として考え、確認のルールを決めておきましょう。

まとめ

この記事のまとめ

  • 従業員を1人でも雇えば、勤怠管理は会社の義務
  • 2019年4月から、すべての事業者にタイムカード・パソコンの使用時間などの客観的な把握が求められる
  • 出勤簿の押印だけでは足りない。始業・終業の時刻を記録する
  • 管理監督者もガイドラインの対象外なだけで、安衛法の把握は必要
  • 記録の保存は原則5年(当分の間3年)。これから作るなら5年保存を前提にする

勤怠管理は、最初の1人を雇うときに決めてしまえば、あとは同じ形で続けるだけです。雇用契約や社会保険の手続きと同じタイミングで、記録の方法と保存のルールを決めておきましょう。

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免責事項

※本記事は2026年10月時点の公開情報(厚生労働省・各労働局の公表資料)をもとにした整理です。労働時間の扱いは、働き方や雇用契約の内容によって異なる場合があります。個別の判断は、労働基準監督署または社会保険労務士など専門家へご相談ください。

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この記事を書いた人

行政書士事務所で4年間、会社設立の書類づくりや申請の補助をしていたHasegawaです。定款の作成から公証人の認証、法務局への登記申請まで、50件以上の手続きに関わってきました。

退職してから、自分でも合同会社を作ってみました。驚いたのは、手伝ってきた側なのに、いざ自分の名前で申請すると画面のどこを押せばいいのか手が止まったことです。公証役場に何を持っていくのか直前まで確認し直し、税務署への届出も順番を一つ勘違いしていました。

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